田髙寛貴「金銭所有権と価値の追及」(法学教室June 2015 No.417、22頁)は、仮想通貨の物権的側面の検討に大変示唆的である。
この論文は、現金通貨に物権的保護を認める議論を展開した上で、預金債権は、預金保護措置などにより、弁済確実性が高いことから、「現金をもっている」のと同視でき、他の一般の債権と区別されうるとする。ただ、郵便切手や有価証券,さらには商品券やプリペイドカード,電子マネー等々,多様な金銭価値の存在形態のうち,どこまでを物権的帰属保護の対象に含めてよいかは問題であるとし、「ビットコインは、通貨としての価値を担保する機関が存在しておらず、このようなものにまで物権的な帰属保護が妥当するとはいえない」と述べる。
たしかに、仮想通貨には、通貨としての価値を担保する機関が存在しておらず、その経済的価値は市場の評価に委ねられている。しかし、預金等と異なり、そもそも債権ではなく、債務不履行が考えられないので、弁済確実性も問題とならず、同列には論じられない。仮想通貨に物権的保護を認めるとすると、別の論拠が必要ということになろうか。物権的保護を認めるとしても、どの仮想通貨が保護されるべきかの判断(ビットコインのみを明示したCJEUのVAT判決も参照)が必要となる。
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